2009年 01月 13日
           
「未来への提言スペシャル(第二部)」より その2
長すぎて,1つのポストに入りませんでした^^;)

その1の続きです・・・



未来学者として,わたしたちが暮らしていくことになる新たな社会の予測をし続けてきたトフラーさん。今,大きな関心を寄せているのが,知識経済の担い手となる子どもたちの教育です。アメリカではこれまでの画一的な教育のあり方を変える試みがはじまっています。

カリフォルニア州 クロービス の街。授業を終えた地元の高校生が毎日通ってくる場所があります。先端研究技術センター。地元の企業と大学が共同で出資し,設立しました。ここでは,およそ1200人の高校生がロボット工学やコンピューター技術の新しい時代のテクノロジーを学びます。この地域には今,IT企業が数多く進出しています。知識が重要視される社会では,経済的な価値をもたらす独創的なアイデアが大切です。子どもたちにその独創力を生み出す力をつけさせるのが,このセンターの狙いです。自ら考える力を培う教育。子どもたちは最新の装置を使い,思い思いにテーマを決めて,楽しみながら研究します。専属の先生が,必要に応じ,アドバイスします。
ロボット工学のクラスです。ブラン君がつくったのは危険な場所で活躍する炭素ロボット。まるで小さな戦車のようです。前方には小型カメラが取り付けられています。撮影した映像をリアルタイムで送信するしくみです。ブラン君は警察の特殊部隊で働くおじさんを手助けしたいと,このロボットを思いつきました。
科学のクラスです。スティーブン君が友人と共同で取り組んでいるのは,新しいやり方で電気を作り出す研究です。バクテリアが起こす化学反応によって発生する電気を取り出そうとしています。インターネットで見つけた最新の論文からヒントを得ました。
生徒たちのアイデアの中には,商品化されたものもあります。ベンチャー企業を立ち上げた若者も現れました。
先端研究技術センター 代表 スーザン・フィッシャーさん(「現代社会は,知識に基づく社会へと大きく変貌しました。生徒たちが自分で入手できる情報はたくさんあります。ですから,わたしたち教育者の責任は,彼らが本当に必要な情報を得て,自ら問題を解決していけるよう,情報の使い方や理解を助けていくことにあるのです。」)
最新のテクノロジーを活かして,独創性を育み,知識経済の担い手を育てる試み。それを支えているのは産学官の新しいネットワークです。これからはこうした画一的でない教育こそが重要になってくると,トフラーさんは指摘します。

田中直毅「今,日本では,教育に関心が集まっています。初等教育も高等教育も問題を抱え,わたしたちにとって頭痛の種となっています。トフラーさんは制度の有り様も含め,教育の問題についてどうお考えですか?」

トフラー「教育問題は日本だけに限りませんよ。アメリカやヨーロッパなど各地で問題になっています。学校教育の現場は,まるで工場のようで,子どもたちはあたかも工場労働者のように扱われてきました。時間通りに行動し,あれをやれ,これをやれ,と指示されてきました。工場では役に立つかもしれませんが,創造的な人間を育てるには間違った教育です。以前に妻のハイジとともに,日本の塾を訪れたことがあります。わたしは日本の教育の素晴らしい点をたくさん知っています。しかし,塾には驚かされました。10歳の子どもが微分積分を学んでいたからです。わたしにもわからない難しい計算です。こんなに小さい子どもが,と感心しました。しかし,感心できなかったのは,子どもたちが朝8時から学校に通い,夕方帰宅するとすぐに塾に出かけ,夜10時半まで勉強したことです。まるで残業です。彼らに労働組合があったなら,超過勤務を主張したでしょうね。」

田中直毅「アメリカでは,公教育の現場でどのような試みがありますか?」

トフラー「たしかにいくつかの試みははじまっていますが,十分ではありません。もっと多角的な実験が必要です。教育問題の解決には,単純な答えなどないからです。注目すべき学校がカリフォルニアにあります。ここの生徒たちは,自分たちで,将来商品化される可能性のあるさまざまな製品を作り出しています。生徒たちに求められているのは,経済的な価値を生み出す創造性です。ただ,残念ながら,このような前向きな試みはごくわずかです。今や大量生産の時代の教育を終えるときが訪れています。必要なのは,教育制度の改革ではありません。ビル・ゲイツがこう言いました。(「システムというものは,小手先で改革するというわけにはいかない。思い切ってシステム全体を入れ替えなければならないのだと。」)言い得て妙,だとは思いませんか?例えば教育は,絶対に義務教育であるべきなのでしょうか。これは民主主義の有り様を考えると,とても思い問いかけです。では,すべての子どもが,同じ年齢で義務教育を始めるべきか,という問いかけはどうでしょう? なぜみんな一緒でなければならないのでしょう。それは一つのサイズの方が効率的だからです。しかし子どもたちは一人一人違っているのです。これからは親たちが,さまざまな選択肢を選べるようにならなければなりません。子どもの得意不得意に合わせるのです。わたしは教育についての革新的な問いを投げかけたいと思います。現在の制度は,子どもたちに害を与え,将来必要とされる創造的な能力の育成を阻んでいます。急進的な意見ですが極めて重要な問題です。」

トフラーさんが未来の教育のあり方として注目しているのが,インドなどの貧しい国の支援をする試みです。おととし,スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラムで発表されました。この試みは企業や大学が社会貢献として,安いコンピューターを開発し,途上国に支給しようというものです。テクノロジーの進化が貧困を解消する手助けになるとして,トフラーさんはこのアイデアを高く評価しています。

トフラー「今,一つの社会貢献として,1台100ドルのパソコンの開発が進められています。この目標は破格の値段ですが,現在1台150ドルというレベルにまできています。目的は途上国の子どもたちがコンピューターにアクセスできるようにすることです。社会貢献の実例として,インドのある会社があるおもしろい実験を行いました。スラムの近くの道端の石の壁に最新型のパソコンをはめ込み,通りがかる子どもたちがスクリーンとキーボードを自由に触れるようにしたのです。早速近所の子どもたちがやってきて,なんだろうと試しはじめました。」

田中直毅「教える人はいるんですか?」

トフラー「誰もいません。それにも関わらず,子どもたちはパソコンを使えるようになったのです。ゲームをしたり,インターネットに接続したり,わずか7歳や8歳の子どもが自分自身で学んでいくのです。これこそが,変化が到来している兆しです。教育制度の転換のヒントがここにあります。豊かな国が捨てるような安いパソコンも役に立つのです。いずれパソコンの値段は50ドル,25ドルと下がり,ゼロに近くなるでしょう。それが教育の資源になるのです。わたしたちは,今こそ,未来の教育を開始する時期を迎えているのです。」

トフラーさんと田中さんはそれぞれのまなざしで見つめてきた2007年の世界。多くの課題が残されています。田中さんが懸念する中東。イラクでは今も銃声が止まず,宗派間の対立は激しさを増しています。国連は内戦状態に限りなく近づいていると警告を発しています。しかし国際社会は今だに問題解決の方法を見出せずにいます。そして,第三の波を発表して以来,トフラーさんが訴え続ける,知識を基盤とする社会への変革。今,テクノロジーの進化のスピードは,驚異的な加速を続け,ついに人類が予測不能な段階に突入したと,トフラーさんは感じています。

トフラー「忘れてはならないことは,わたしたちは今,科学技術が驚くべき可能性を生み出す時代の入り口に立っているということです。世界の研究室で行われていることは,驚愕すべきことです。それはITや新型コンピューターという次元ではありません。もっと人間の根本に関わる問題,脳の機能に関する問題です。わたしたちは果たして,自らも脳の機能を改善できるようになるのでしょうか。わたしたちが,人間というとき,それは何を意味するのか。今は人間かもしれませんが,テクノロジーが進化すれば,次の段階に踏み込むかもしれません。それは200年後ではなく,おそらく今世紀中に起きることでしょう。」

機械が人工知能を取り入れて,人間化する。そして人間が,テクノロジーを自らの身体に取り入れて,サイボーグ化する。こうした可能性は,現実のものになろうとしています。

対談の最後に,トフラーさんと田中さんに21世紀を切り拓くために最も大切なキーワードを書いてもらいました。

田中さんが書いたキーワードは,「global governance innovation(国際統治の革新)」です。
「日本は失われた10年ともいわれたこの間に,経済の構造改革とともにコーポレートガバナンス企業統治の改革を行ってきました。その結果,企業の世界では,多少なりとも良い統治を達成することができました。今は政府の改革の議論をすすめています。しかし,国際社会においては,良い統治システム,グローバルガバナンスを確立する動きがありません。わたしたちが進むべき次のステージは,国際的な統治システム,グローバルガバナンスの革新なのです。」

トフラーさんが書いたキーワードは,「Mission of 21st Century to Re-Define Human(人類の再定義)」です。21世紀,人類の使命は,人類を再定義することです。今後,生物学,遺伝子工学,ナノテクノロジーなどの分野は,めざましい発展を遂げることでしょう。それは人類の頭脳と力を画期的に向上させます。わたしたちは新しい能力を手にするかもしれません。次世代の人類となるかもしれません。あるいは他のものとなっているかもしれません。今後,生物学や脳科学によって,新たな問題が浮上し,劇的な対決が起きることでしょう。わたしたちの倫理観が問われています。人類が互いに殺しあってはなりません。良心を失わず,さらなる知恵と互いに手をたずさえていく力を獲得できるよう願っています。」

急激な波の変革に現れながら,現代社会を生きるわたしたちに2人はメッセージを送り続けます。

希望の持てる21世紀を切り拓くために,ひとりひとりがそのヒントを探し出してほしい。トフラーさんと田中さんからの未来への提言です。
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by skanegon | 2009-01-13 10:42 | Daily
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